こんにちは、AIS弁理士事務所の井上です。東京都杉並区で商標専門の弁理士をしています。
先日、タイ古式マッサージのサロンを経営されているお客様から、次のような質問をいただきました。
>タイのヨガ 「ルーシーダットン」は、過去に商標登録をした方がいたのですが、後々撤回されました。
>他国の文化等は、商標登録が難しいということなのでしょうか?
>また、商標登録が撤回される時は、どのような手続きがなされるのでしょうか?
なるほどー。これは実際によくある話で、なおかつ深いテーマですね。
今日は、このご質問に答えていきたいと思います。
(1)普通名称は商標登録になりません
日本の商標法では、例えば、「整体」とか「マッサージ」のように辞書に載っているような普通名称は商標登録になりません。普通名称かどうかは、商標登録の審査の時に特許庁の審査官が辞書とか、インターネットとかで調べて判断しています。
「ルーシーダットン」という言葉をインターネットで調べると、Wikipediaに、「ルーシーダットン(ฤาษีดัดตน)はタイに伝わる伝統医学の一つで、自己整体法。」と記載されています。「伝統医学」というくらいですので、これは、少なくとも、完全に普通名称なのですね。
しかし、審査官の調査も絶対に穴がないということはありませんから、外国の言葉には気がつかないことがあります。それで、「ルーシーダットン」については、タイの伝統医学だと気づかずに、商標登録になってしまったのだと思います。
(2)普通名称だけでなく、外国で有名な名前なども商標登録になりません
例えば、日本では有名でないけれど、スペインでは超有名な商品名があったとします。これはもちろんスペインでは商標登録しているわけですが、日本では販売していないので、日本ではまだ商標登録していません。
こういう時に、「これは将来日本でも流行るかもしれない」という考えのもと、先取り的に商標登録する人がいます。しかし、実は、こういった商標登録は、商標法の4条1項19号という法律で禁止されています。
逆の立場になってよく考えていただければわかると思うのですが、例えば、日本で有名な「くまモン」を中国人が中国で商標登録したら、どうでしょうか。「ビジネス的にどうか?」「法律的にどうか?」はさておき、気分は悪いですよね。よく、中国に関してこのような商標登録の話がニュースになりますが、日本人にも、結構同じことを考える人はいるんです。
(3)審査官が見落として商標登録になった場合、「商標登録無効審判」という手続きがあります
しかし、外国で有名な言葉とか、外国で普通名称として使われている言葉というのは、本来商標登録にならない言葉であっても、審査官の調査から漏れることが多々有ります。
ですから、商標法では、ルーシーダットンのように、審査官が見落として商標登録になってしまうということも想定して、「商標登録無効審判」という制度を設けています。
この制度は、一度商標登録になった言葉であっても、「これは過誤登録だ!」と言ってその商標登録を無効にすることを主張できる制度です。この主張が認められると、商標登録は最初からなかったものとみなされます。
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